ゴーグルに、涙

2002年10月19日
ひさしぶりに、ぽっかりと時間が空き、
近所の体育館へ泳ぎに行った。

もう、久しく泳いでいなかったので、
ゴーグルとキャップが見つからず、
昔通っていたスイミングスクールの跡地に出来た
小さなフィットネスクラブへ買いに行った。

体育館は、昔と変わらない。
ロッカールームの湿度や、ピンク色のシャワーカーテンも。
私だけ、大きくなって戻ってきた。

新しいゴーグルは、慣れない匂いがした。

プールにもぐり、ゴーグルを目に落とした。
パチンと、後ろでゴムが鳴った。
息を吸い込んで、壁を蹴った。

立て続けに泳いで、肩で息をし始めた頃、
スイミングスクールの記憶がよみがえり始めた。

インターバル。
規定のタイムより遅いと、壁にタッチして顔をあげた瞬間に
頭の上にビート版が振ってきた。
ばかやろう、と何度も言われた。
遅れた本数分、私達は余分に泳がなければならなかったから、
顔を上げて、タイムボードを見るのが怖かった。

まだ肩で息をしているのに、スタートの声がかかる。
ゼイゼイ言いだしている喉に空気を押し込み、また壁を蹴る。

タッチまで、あと10メートル。5メートル。あと、ひと掻き。
わずかな時間を省く為に、息継ぎを我慢して壁だけを目指した。

どうしてこんな思いをしてまで、自分は泳ぐのだろうと、
スタート毎に悲しくなる。
そして、ゴーグルに、涙。

体育館で、ふと思い出した昔々の話。

逃げ出す代わりに、溜まった涙。
今、私の涙は、同じ色をしているだろうか。



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