チェリーパイ2003

2003年3月28日
私の部屋には、食べかけのチェリーパイがある。
熟した赤いジャムを匂わせながら、
死刑執行の日を待つマリーアントワネットのように
捨てられる日をただひとりで待ち続ける。

チェリーパイには姉妹がいて、
こちらの名前はアプリコットパイという。
アプリコット嬢は、きちんと封がなされたまま
お菓子の棚で食べられる日を心待ちにしている。

私は毎朝、チェリーパイを横目で眺める。

はやく、捨ててよ。

チェリーパイは恨めしそうに私をにらみ返す。

どうしようかしら。

野菜ジュースを飲みながら、私は思案する。

まだ、捨てないわ。

いい加減にしてよ、と泣き喚くチェリーパイ。

恐ろしきかな、ここは法治国家じゃない。

チェリーパイ、次は法治国家に買われるといいね。

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