今朝、4時過ぎに電話の音で目がさめた

小さなホテル 高い天井
電気をつけたまま寝てしまった事を思い出し、電話をとる

日本から、母親の声がすこし割れてとどく

「いまそちらは何時?」とはしゃいだ声で尋ねる

「朝の4時、でもちっとも眠くない」と私は答える

事実、時差ぼけは見事な効き目で
午前4時の私をとても快活な状態に導いている

電話を切り、支度を整えてホテルを出る
まだ太陽は昇りきっていない

ケーブルカーでアップダウンの激しいパウエル通りをいく

9ドルの1日券を購入して、20ドル紙幣を渡したら
お釣が無いから、ちょっと待っていてねといわれる

車掌は一生懸命乗客から一ドル札を集めるけれど
なかなか11ドルに達しない
運転手に「5ドル貸して!」と叫ぶ
途中で運転手が車掌と交代して、私の前に立つ
ニコニコと笑ったおじいちゃんのような運転手が
「5ドルだけ?」と私に手渡す
もう一度いたずらをする子供のような顔で
「本当にこれで充分?」と尋ねる
私は、母親になったような気持ちで、笑いながら「充分よ!」と答える
向かいに座った中国人のおじいちゃんが
「だめだよ、ぜんぜん足りないって言ってやるんだ!」と
やっぱり子供のような笑い顔でちゃちゃを入れてくる
「次はそう言うわ!」と私も笑う

おじいちゃんはチャイナタウンで降りていった
ジャクソン通りから、海を眺めたらちょうど朝陽が昇るところで
金色に輝く海が、まるで砂漠のようだった
大きく息を吸い込む、そしてロンバートストリートへたどり着く

世界一曲がりくねった道、を一気に走り降りた
車が通れば、ドライビングテクニックを観て楽しもうと思っていたが
早朝、わざわざこの通りを通る車はなく、
私は堂々と車道を走り降りた

そのままイタリア人街へと向かう

mama’sという名の朝食屋へ
8時からのオープン前に既に店の前には列が出来ていた
少し待って、ようやく店が開く

パンケーキか、卵料理か、フレンチトーストか
メニューを眺め、後ろで食べる人を眺め、オープンキッチンで
じゅうじゅうと焼かれるジャガイモやベーコンを凝視する

パンケーキとソーセージとコーヒー

焼きたてのパンケーキがたっぷりのメープルシロップと共に置かれる
おいしい
熱くて火傷したけれど、とっても美味しい
コーヒーを沢山飲み、ソーセージを箸休み代わりにつまみながら
一人でたいらげた朝ごはん

満足な気持ちをかかえ、フィッシャーマンズワーフへ向かう

直通のバスがない為、ファーマーズマーケットで乗り換える
ファーマーズマーケットでは、「地元の農家から買ってくれてありがとう!」
という看板が立てられている
朝からみんな一生懸命、にんじんやらハムやらチーズやらを買い求めている
私はカリフォルニア郊外で作られているオリーブオイルを2本と
クッキーの型を沢山買った

そのあと、ミュニメトロでフィッシャーマンズワーフへ
隣の中国人の男の子が話し掛けてくる
「日本人?」
「そうよ、あなたは・・・?」
「中国人、そこのバークレーで大学に行っている」
「羨ましい!若いのね、私は日本で働いています」
そのまま少し話して、フィッシャーマンズワーフで降りる

こういうところのお土産屋さんはどうしてこんなにげんなりするんだろうと
すこし面白い気分で店を通り過ぎる
ふと、シーライオンの看板が多い事に気づき、
ああ、野生のアシカが見られるのはここだったか、と思い出す
遠くにアシカの鳴き声が聞こえる
急ぐ、逃げはしないけれど、急ぐ

たくさんたくさん、居た
私はこんなに怠惰なアシカを、こんなに沢山見たのは初めてだったので
どうしていいのかわからず、とにかく見た
何かすごいことが起きるかもしれないと思って

何もおきないまま、時間が流れた
相変わらずアシカは、勝手気ままに寝たり、じゃれたり、けんかしたり
人間だけが、必死に彼らを観続けていた

さて、行こうと思い、自転車をかりにいく
自転車でゴールデンブリッジを渡ろうと思ったのだ

自転車を借りて、ずっとずっと走っていく
ゴールデンゲートブリッジはずっと見えているのに
なかなかたどり着かず、もしかして道を間違えているのかと
何度も疑いながら、まっすぐの道を行く

最初にたどり着いたのは、ゴールデンゲートブリッジのふもと
驚いたことに、橋の下にはサーファー達が波を待って
ぷかぷかと浮いていた
私も興奮して、彼らと一緒に波を待つ
大きな波はないけれど、橋の下でサーフィンをするその組み合わせは
なんとなく私にベルリンを思い出させた
大きな人工物と、小さな自然を楽しむユーモアは
なんとなくドイツを思い出させるのだ
ベルリン!私がもっとも懐かしさを感じる街。
昨年の同じ時期は、ベルリンの緑の下でぐうぐうと寝ていたのだ
とても晴れていて、私はたくさんの買い物とたくさんの午睡と
たった一人の日本人との出会いとを楽しんだ

さて、ここはアメリカで私はゴールデンゲートブリッジを目指す
小さな日本人として、再び自転車に乗る
びっくりするほど普通の山道を登らなければならず
皆背筋を反り返らせて立ち漕ぎをしている姿がおかしかった

山を登り、少し進むと橋につく
ようやく着いたという感動はあまりない
ただひたすらにこの橋を渡ろうと思う
何度か止まって写真を撮ったりもしたけれど
とにかくこの橋の上はとんでもない風の強さだった

ごうごうと吹く風に横つらをはたかれながら
一生懸命反対岸へと向かう

着いたらついたで、またもや延々と道をゆく
小さなヨットハーバーのような町があり、そこを目指した

着いたその町は、まるで軽井沢のように店が並び
驚くほどたくさんの人がいた
私も自転車を止め、道なりに歩く
途中でサーモンのサンドウィッチを食べたが、朝のやけどに
サーモンの塩がしみて、半分残してしまう
途中、気温も下がってきて、私はちょっと元気をなくす
この街はすこし田舎じみていて、それで私は
大好きな会社の同僚を思い出してしまった
海が好きで、のんびりと息を抜くペースが似ている人
彼とは、昨年の夏の休暇で、偶然同じ飛行機に乗った
成田からチューリッヒまで、
チューリッヒから私はバルセロナへ彼はザグレブへ

クロアチアへいくんだといわれたときには、
この人はちょっと癖のある人なのだろうかと感じたけれど
聞いてみるとクロアチアはとても綺麗な海があるとわかった
そんな国へ一人で行こうとしている彼が、
なんとなく自分と似ている気がして私はとてもうれしかった
以来、なぜか彼にだけは、
私は素直に自分の好きな物事を話すことが出来る
彼は否定することを口にしない
その前に面白がるのだ
その外部に対する素直さが、また私をリラックスさせるのだろう
彼はそうやって同期を和ませていることなど、まったく気づいていないだろうけれど

一通り町で遊んで、帰りはフェリーに乗る
自転車屋に戻って荷物を引き取り、ケーブルに揺られてユニオンスクエアへ戻る

ホテルへ戻ると、疲れていたのかベッドで眠ってしまった
津波の夢を見て起きる
寝ていたのは30分程度だった
身支度を整えて、街へ散歩に行く
ぶらぶらと洋服屋や靴屋を眺め、ヴァージンメガストアでCDを物色した

部屋に帰り、買ったCDを早速聞きながら本を読んだり、日記を書いた

明日はサンフランシスコを発つ日だ
すこしさみしい

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