ある夜
2006年4月3日小さいころから、うすうす分かっていたことだけれど、私は雨女だ。
1週間晴れた日が続いたのに、昨日だけ雨が降った、それもひどく。
一緒に花見に行こうと約束した友人は、「日曜日は晴れるだろ、なにしろ俺は晴男だし」と自信満々に電話口で私に告げたけれど、
私は心の中でひっそりと「残念ながら、負ける気がしない」と呟いた。
天気予報を見ると、本当に日曜日だけ傘印が表示されていて
私は悲しくなりながらも、そろそろ雨女として生きていく覚悟を決めねばならない、と淡々と思うのだった。
一抹の期待をかけ、ありとあらゆる天気予報のウェブサイトをクリックしながら。
晴男は日曜の午後になっても「雨はなんとか持ちこたえそうだな」とやせ我慢のメールを送ってきたが、もはや雨女として確固たる自信を持った私は、優しく「そうね、このまま雨が降らなかったら春霞に桜ね」と心にもない言葉をとりあえず送っておいた。
ここで私は重大なことに気づいてしまった。
私はおそらく、彼のことが好きなのだろう、と。
間違いなく雨は降るだろうに、それを伝えたら会えなくなってしまうかもしれない、ということを私はひどく恐れていた。
大概において、晴男は雨の日に出歩くなんていう趣味は持ち合わせていないものだし。
そうこうしている間に日は暮れ、私達は大雨の中上野駅へ降り立った。
公園口を出ると、コントのような暴風雨で、こんな中桜を見に行くのは意地を張り合って引くにひけなくなってしまった倦怠期のカップルのようで少し恥ずかしい気がした。
けれど、あと数十メートル先に桜があるのに、
そして晴男は火曜から米国出張へ出てしまい今年桜を見れるのは今日しかないのに、
そんな状況で一体誰が引き返せようか。
もういい、かわいらしくなくても良い、
暴風で髪も傘もよれよれで、ジーンズの裾を捲し上げた私はきっと実家のオカンを思い出させるくらいたくましかっただろうけれど、
私はただひたすらに桜をこの人に見せたい、
それだけの価値がある、この夜、この雨、この馬鹿馬鹿しいシチュエーションの中、今咲き誇る桜を見ることには、だからとにかく前へ進め、進め、進めっ…あぁ、桜の花見えた。
空には満開の桜、足元には琵琶湖程大きい水溜り、
隣には桜をまるで実験対象のように真剣に眺める友人。
それは、彼のことを好きだと気づいてしまったある夜の話。
1週間晴れた日が続いたのに、昨日だけ雨が降った、それもひどく。
一緒に花見に行こうと約束した友人は、「日曜日は晴れるだろ、なにしろ俺は晴男だし」と自信満々に電話口で私に告げたけれど、
私は心の中でひっそりと「残念ながら、負ける気がしない」と呟いた。
天気予報を見ると、本当に日曜日だけ傘印が表示されていて
私は悲しくなりながらも、そろそろ雨女として生きていく覚悟を決めねばならない、と淡々と思うのだった。
一抹の期待をかけ、ありとあらゆる天気予報のウェブサイトをクリックしながら。
晴男は日曜の午後になっても「雨はなんとか持ちこたえそうだな」とやせ我慢のメールを送ってきたが、もはや雨女として確固たる自信を持った私は、優しく「そうね、このまま雨が降らなかったら春霞に桜ね」と心にもない言葉をとりあえず送っておいた。
ここで私は重大なことに気づいてしまった。
私はおそらく、彼のことが好きなのだろう、と。
間違いなく雨は降るだろうに、それを伝えたら会えなくなってしまうかもしれない、ということを私はひどく恐れていた。
大概において、晴男は雨の日に出歩くなんていう趣味は持ち合わせていないものだし。
そうこうしている間に日は暮れ、私達は大雨の中上野駅へ降り立った。
公園口を出ると、コントのような暴風雨で、こんな中桜を見に行くのは意地を張り合って引くにひけなくなってしまった倦怠期のカップルのようで少し恥ずかしい気がした。
けれど、あと数十メートル先に桜があるのに、
そして晴男は火曜から米国出張へ出てしまい今年桜を見れるのは今日しかないのに、
そんな状況で一体誰が引き返せようか。
もういい、かわいらしくなくても良い、
暴風で髪も傘もよれよれで、ジーンズの裾を捲し上げた私はきっと実家のオカンを思い出させるくらいたくましかっただろうけれど、
私はただひたすらに桜をこの人に見せたい、
それだけの価値がある、この夜、この雨、この馬鹿馬鹿しいシチュエーションの中、今咲き誇る桜を見ることには、だからとにかく前へ進め、進め、進めっ…あぁ、桜の花見えた。
空には満開の桜、足元には琵琶湖程大きい水溜り、
隣には桜をまるで実験対象のように真剣に眺める友人。
それは、彼のことを好きだと気づいてしまったある夜の話。
コメント