春川渓谷
2006年4月9日中央線に乗り換える時の風が少し冷たい
首に巻いていたストールを腰に巻きなおす
電車の中をぐるりと見回すと、スポーツバッグ、登山リュックを抱えた人が沢山、それと朝帰りの女の子が少し
終点の五日市駅で降り、川に向かって急ぎ足で歩く
後輩達は既に川原で寛いでいた
10時のスタートまで、体を温めたり、お手洗いに行ったり、それぞれ生き物らしい行動を取って待つ
ストレッチをする後輩を見ながら、狩の前のチーターみたい、と思う
本当は山猿なんだと気づくのは、まだ先の話
ここは秋川渓谷で、私はおそらく15年ぶりくらいにきた場所となる
小学生のころ、飯盒炊爨できた場所
今日は、レースに参加するために来ている
渓谷沿いを上流に向かって走って戻ってくる10キロメートル
水に濡れますとウェブ上には書いてあったような気がするが
どこでどうやって濡れるのかも良く分かっていない
いつも通り、黒い短いコットンのパンツに、
ヘイトアシュバリーで買った薄くて柔らかいTシャツを着る
布地の薄いランニングシューズをはき、極力水の吸収を抑える
どこでどうやって濡れるのかは良く分かっていないのだけど
そして予め配布された軍手とヘルメットを着用する
これは一体どこで役立つというのだろう
スタートのピストルが鳴る
川沿いの石々に足を取られながら、軽く走り出す
いつの間にか日差しは強くなり、乾いた軍手の中で手が暑い暑いと言い出す
5分程走ったただろうか、妙に混んでいると思ったら、
前の人が皆、川をばしゃりばしゃりと横断していた
足首までくらいの浅瀬だが、渡らないことには前には進めない
確かに水に濡れるレースのようだ、と納得して足を水に差し入れる
予想通り、春の川はまだ冷たい
そのまま、川原沿いの枯れ草野原を走っていると、少しずつ風景が変わってくる
足元も小さな石から岩場になり、川も少し深くなる
軍手をはめた手で岩をつかみ足をかける
川底の苔に足を取られないようにしながら、何度も川を横断する
背の小さい私は、時には腰まで水に浸かるはめになってしまう
折り返し地点の1キロ程手前で、既に復路に入った後輩とすれ違う
高い岩から岩へ飛び移るようにして、一瞬にして彼は消えてしまった
まるで忍者か、山猿のようだった
それはもう、運動神経の塊としか言いようがなく、
凶暴性を孕んだ美しさがそこにはあった
折り返し地点の前は、驚く程澄んだ水で
走り去ってしまうのが勿体ないくらいだった
しかし、今はタイムレースを楽しむ為、ひたすらに進む
折り返してからは、あっという間の5キロメートル
ゴールを抜けて、地元の野菜をふんだんに使った暖かい汁を頂く
水を吸ったウェアが急速に私の体を冷やしていく
着替えを済ませ、川原に戻ると
山猿はオレンジ色のウィンドブレーカーを着て昼寝をしていた
目が覚めて、俺3位だったんですよ、と言う
1位と2位は元国体選手だって、俺凄いっす、と屈託ない顔で笑う
缶ビールをあけ、山猿の健闘と、太陽と渓流に乾杯をする
青い空、緑色の川、バーベキューをする家族達と思い思いの酒を手にくつろぐアスリート達
とてもエゴイスティックだとは思うけれど、
やはりこれは幸せな風景
首に巻いていたストールを腰に巻きなおす
電車の中をぐるりと見回すと、スポーツバッグ、登山リュックを抱えた人が沢山、それと朝帰りの女の子が少し
終点の五日市駅で降り、川に向かって急ぎ足で歩く
後輩達は既に川原で寛いでいた
10時のスタートまで、体を温めたり、お手洗いに行ったり、それぞれ生き物らしい行動を取って待つ
ストレッチをする後輩を見ながら、狩の前のチーターみたい、と思う
本当は山猿なんだと気づくのは、まだ先の話
ここは秋川渓谷で、私はおそらく15年ぶりくらいにきた場所となる
小学生のころ、飯盒炊爨できた場所
今日は、レースに参加するために来ている
渓谷沿いを上流に向かって走って戻ってくる10キロメートル
水に濡れますとウェブ上には書いてあったような気がするが
どこでどうやって濡れるのかも良く分かっていない
いつも通り、黒い短いコットンのパンツに、
ヘイトアシュバリーで買った薄くて柔らかいTシャツを着る
布地の薄いランニングシューズをはき、極力水の吸収を抑える
どこでどうやって濡れるのかは良く分かっていないのだけど
そして予め配布された軍手とヘルメットを着用する
これは一体どこで役立つというのだろう
スタートのピストルが鳴る
川沿いの石々に足を取られながら、軽く走り出す
いつの間にか日差しは強くなり、乾いた軍手の中で手が暑い暑いと言い出す
5分程走ったただろうか、妙に混んでいると思ったら、
前の人が皆、川をばしゃりばしゃりと横断していた
足首までくらいの浅瀬だが、渡らないことには前には進めない
確かに水に濡れるレースのようだ、と納得して足を水に差し入れる
予想通り、春の川はまだ冷たい
そのまま、川原沿いの枯れ草野原を走っていると、少しずつ風景が変わってくる
足元も小さな石から岩場になり、川も少し深くなる
軍手をはめた手で岩をつかみ足をかける
川底の苔に足を取られないようにしながら、何度も川を横断する
背の小さい私は、時には腰まで水に浸かるはめになってしまう
折り返し地点の1キロ程手前で、既に復路に入った後輩とすれ違う
高い岩から岩へ飛び移るようにして、一瞬にして彼は消えてしまった
まるで忍者か、山猿のようだった
それはもう、運動神経の塊としか言いようがなく、
凶暴性を孕んだ美しさがそこにはあった
折り返し地点の前は、驚く程澄んだ水で
走り去ってしまうのが勿体ないくらいだった
しかし、今はタイムレースを楽しむ為、ひたすらに進む
折り返してからは、あっという間の5キロメートル
ゴールを抜けて、地元の野菜をふんだんに使った暖かい汁を頂く
水を吸ったウェアが急速に私の体を冷やしていく
着替えを済ませ、川原に戻ると
山猿はオレンジ色のウィンドブレーカーを着て昼寝をしていた
目が覚めて、俺3位だったんですよ、と言う
1位と2位は元国体選手だって、俺凄いっす、と屈託ない顔で笑う
缶ビールをあけ、山猿の健闘と、太陽と渓流に乾杯をする
青い空、緑色の川、バーベキューをする家族達と思い思いの酒を手にくつろぐアスリート達
とてもエゴイスティックだとは思うけれど、
やはりこれは幸せな風景
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