ドレミの歌

2006年8月10日
幸せになれない人、がいるものである

私は昔から情というものが無く、
幸せになれない人には、何も手を貸さないことにしている

私は意地が悪い

悪趣味だ

同期が、最近女の人に振られた、という

背中を丸め、口をヘの字に曲げ、カウンターテーブルに寄りかかっている

大体、良い仕事って何だよ、
利益の増大のことしか考えてねぇ、あこぎな商売だよ
俺なんか、口八丁手八丁で儲けているだけだぜ

そういう割に、口八丁手八丁で儲けている(らしい、彼曰く)ことを誇らしげに言う

なんだ、自分の仕事に誇りを感じているなら、素直にその気持ちを表現すればいいのに
と私は呆れながら水割りを口にする

喉が少しひんやりとして、気持ちがいい

相反する気持ちを上手に整理できないのだろう

私もよくある

だけれど、自分のやっている仕事にケチをつけながら
そのくせ本当は誇りを持っているなんて
なんて歪んだ愛情だろう

大きな声で歌でも歌えば、きっと喉につかえたものが取れて
まっすぐに愛情を吐き出せるのじゃないかしら

そう思って、彼に「カラオケにでもいっておいで」と言ってみる

なんだかつまらない皮肉みたいなものを返されたが、
あまりにも気の利かない球だったので、キャッチもそこそこに夜道を歩いた

私の大好きなボス達は、人を騙してまで金を儲けてはいけない、と明るく、だけど厳しく言う

それは上の人間だから言える台詞だろ、と彼は酔っ払った目をして言う

いいえ、私達にそういう仕事をするな、と言うし、彼らは絶対にそういう匂いのする仕事を許しはしない

それは儲けてる部署だからだろ、黙ってても金が入ってくるからだろ、と彼は言う

投資はいいよなぁ、大金つぎ込んで、それで100億、200億儲けました、ってそんなのあたり前なんだよな

そんなこと分っているのに、どうしてそんな悲しそうに話すんだろう

私の部長は、かつて昼食の席でふと言った

いいか、勘違いするんじゃないぞ
大金つぎ込んでいるんだから、リターンも大きく見えるんだ
大金つぎ込んで、100円しか利益なかったらおおばか者だろう?
一方で、100円を積み上げて10百万円にする仕事もある
どちらが優れているかなんて、比べる問題じゃないんだよ

そうやって、私達を励ましてくれる
私はフェアで夢のあるボスに出会えて幸せ者だ

そして、私はこの部署で黙ってお金の入ってくる仕事なんて無いと知った

水をやらずに木は育たない

毎日水をやるのは同じこと

キャベツを育てるも、杉の木を育てるも同じこと

大切なのは、どれだけ愛情をこめて水を注いでやるか

きっと、たぶん

銀座で同期に手を振って別れ、
家に戻り、サウンドオブミュージックのCDを聴いている

高らかに歌おうよ、愛情こめて歌えばきっと気持ちが晴れるよ

ドレミの歌

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

テーマ別日記一覧

日記内を検索