感嘆
2006年8月18日真剣に感服しているのだと分った
まもなくインドネシアへ旅立つ上司と、室長とラウンジで飲んでいたとき
ふと上司が「あいつは頭がいいな」とぽつりといい、
室長が「本当にそうだ、それに後輩の面倒も良く見ているし、お前はラッキーだよ」と私に微笑みかけた
あぁ、やっぱりあの人は頭が素晴らしく良い人の一人なんだと
私はずっと抱えていたおぼろげな思いを確信に変えた
室長は非常に頭の良い人間で、とても同じ星の人間とも思えないが、
ひとつ上の先輩も不思議な程頭が良い
語学が出来る、とか、計数感覚が優れている、とか、交渉力がある、とか、全て違う
(室長はその全てが優れている)
この人の頭のよさは何だろう、といつも思う
あえて言えば、学習能力が高い、というのか
読解能力も高い
情報を正確に精緻に吸収し、アウトプットする
そして驚くほどの一貫性と、集中力
私はいつも驚く
そして感動する
ただただ、感動する
これ以上、何も言えなくなる
まもなくインドネシアへ旅立つ上司と、室長とラウンジで飲んでいたとき
ふと上司が「あいつは頭がいいな」とぽつりといい、
室長が「本当にそうだ、それに後輩の面倒も良く見ているし、お前はラッキーだよ」と私に微笑みかけた
あぁ、やっぱりあの人は頭が素晴らしく良い人の一人なんだと
私はずっと抱えていたおぼろげな思いを確信に変えた
室長は非常に頭の良い人間で、とても同じ星の人間とも思えないが、
ひとつ上の先輩も不思議な程頭が良い
語学が出来る、とか、計数感覚が優れている、とか、交渉力がある、とか、全て違う
(室長はその全てが優れている)
この人の頭のよさは何だろう、といつも思う
あえて言えば、学習能力が高い、というのか
読解能力も高い
情報を正確に精緻に吸収し、アウトプットする
そして驚くほどの一貫性と、集中力
私はいつも驚く
そして感動する
ただただ、感動する
これ以上、何も言えなくなる
ドレミの歌
2006年8月10日幸せになれない人、がいるものである
私は昔から情というものが無く、
幸せになれない人には、何も手を貸さないことにしている
私は意地が悪い
悪趣味だ
同期が、最近女の人に振られた、という
背中を丸め、口をヘの字に曲げ、カウンターテーブルに寄りかかっている
大体、良い仕事って何だよ、
利益の増大のことしか考えてねぇ、あこぎな商売だよ
俺なんか、口八丁手八丁で儲けているだけだぜ
そういう割に、口八丁手八丁で儲けている(らしい、彼曰く)ことを誇らしげに言う
なんだ、自分の仕事に誇りを感じているなら、素直にその気持ちを表現すればいいのに
と私は呆れながら水割りを口にする
喉が少しひんやりとして、気持ちがいい
相反する気持ちを上手に整理できないのだろう
私もよくある
だけれど、自分のやっている仕事にケチをつけながら
そのくせ本当は誇りを持っているなんて
なんて歪んだ愛情だろう
大きな声で歌でも歌えば、きっと喉につかえたものが取れて
まっすぐに愛情を吐き出せるのじゃないかしら
そう思って、彼に「カラオケにでもいっておいで」と言ってみる
なんだかつまらない皮肉みたいなものを返されたが、
あまりにも気の利かない球だったので、キャッチもそこそこに夜道を歩いた
私の大好きなボス達は、人を騙してまで金を儲けてはいけない、と明るく、だけど厳しく言う
それは上の人間だから言える台詞だろ、と彼は酔っ払った目をして言う
いいえ、私達にそういう仕事をするな、と言うし、彼らは絶対にそういう匂いのする仕事を許しはしない
それは儲けてる部署だからだろ、黙ってても金が入ってくるからだろ、と彼は言う
投資はいいよなぁ、大金つぎ込んで、それで100億、200億儲けました、ってそんなのあたり前なんだよな
そんなこと分っているのに、どうしてそんな悲しそうに話すんだろう
私の部長は、かつて昼食の席でふと言った
いいか、勘違いするんじゃないぞ
大金つぎ込んでいるんだから、リターンも大きく見えるんだ
大金つぎ込んで、100円しか利益なかったらおおばか者だろう?
一方で、100円を積み上げて10百万円にする仕事もある
どちらが優れているかなんて、比べる問題じゃないんだよ
そうやって、私達を励ましてくれる
私はフェアで夢のあるボスに出会えて幸せ者だ
そして、私はこの部署で黙ってお金の入ってくる仕事なんて無いと知った
水をやらずに木は育たない
毎日水をやるのは同じこと
キャベツを育てるも、杉の木を育てるも同じこと
大切なのは、どれだけ愛情をこめて水を注いでやるか
きっと、たぶん
銀座で同期に手を振って別れ、
家に戻り、サウンドオブミュージックのCDを聴いている
高らかに歌おうよ、愛情こめて歌えばきっと気持ちが晴れるよ
ドレミの歌
私は昔から情というものが無く、
幸せになれない人には、何も手を貸さないことにしている
私は意地が悪い
悪趣味だ
同期が、最近女の人に振られた、という
背中を丸め、口をヘの字に曲げ、カウンターテーブルに寄りかかっている
大体、良い仕事って何だよ、
利益の増大のことしか考えてねぇ、あこぎな商売だよ
俺なんか、口八丁手八丁で儲けているだけだぜ
そういう割に、口八丁手八丁で儲けている(らしい、彼曰く)ことを誇らしげに言う
なんだ、自分の仕事に誇りを感じているなら、素直にその気持ちを表現すればいいのに
と私は呆れながら水割りを口にする
喉が少しひんやりとして、気持ちがいい
相反する気持ちを上手に整理できないのだろう
私もよくある
だけれど、自分のやっている仕事にケチをつけながら
そのくせ本当は誇りを持っているなんて
なんて歪んだ愛情だろう
大きな声で歌でも歌えば、きっと喉につかえたものが取れて
まっすぐに愛情を吐き出せるのじゃないかしら
そう思って、彼に「カラオケにでもいっておいで」と言ってみる
なんだかつまらない皮肉みたいなものを返されたが、
あまりにも気の利かない球だったので、キャッチもそこそこに夜道を歩いた
私の大好きなボス達は、人を騙してまで金を儲けてはいけない、と明るく、だけど厳しく言う
それは上の人間だから言える台詞だろ、と彼は酔っ払った目をして言う
いいえ、私達にそういう仕事をするな、と言うし、彼らは絶対にそういう匂いのする仕事を許しはしない
それは儲けてる部署だからだろ、黙ってても金が入ってくるからだろ、と彼は言う
投資はいいよなぁ、大金つぎ込んで、それで100億、200億儲けました、ってそんなのあたり前なんだよな
そんなこと分っているのに、どうしてそんな悲しそうに話すんだろう
私の部長は、かつて昼食の席でふと言った
いいか、勘違いするんじゃないぞ
大金つぎ込んでいるんだから、リターンも大きく見えるんだ
大金つぎ込んで、100円しか利益なかったらおおばか者だろう?
一方で、100円を積み上げて10百万円にする仕事もある
どちらが優れているかなんて、比べる問題じゃないんだよ
そうやって、私達を励ましてくれる
私はフェアで夢のあるボスに出会えて幸せ者だ
そして、私はこの部署で黙ってお金の入ってくる仕事なんて無いと知った
水をやらずに木は育たない
毎日水をやるのは同じこと
キャベツを育てるも、杉の木を育てるも同じこと
大切なのは、どれだけ愛情をこめて水を注いでやるか
きっと、たぶん
銀座で同期に手を振って別れ、
家に戻り、サウンドオブミュージックのCDを聴いている
高らかに歌おうよ、愛情こめて歌えばきっと気持ちが晴れるよ
ドレミの歌
フラリ?
2006年7月27日新しい上司が来た
インドネシアから戻ってきた
細かい人だが、かわいらしい人だ
やんちゃである
わたしの担当しているプロジェクトの立ち上げメンバーでもある
インドネシアの通貨危機をのりこえたプロジェクト
わたしはこの仕事だけは有る程度目処をつけてから会社を離れたいと思っている
いや、新しい上司の出現は、わたしに会社を離れる気持ちを忘れさせようとすらしている
風のふくほうへ、ゆっくり向いていければいいと思う
インドネシアから戻ってきた
細かい人だが、かわいらしい人だ
やんちゃである
わたしの担当しているプロジェクトの立ち上げメンバーでもある
インドネシアの通貨危機をのりこえたプロジェクト
わたしはこの仕事だけは有る程度目処をつけてから会社を離れたいと思っている
いや、新しい上司の出現は、わたしに会社を離れる気持ちを忘れさせようとすらしている
風のふくほうへ、ゆっくり向いていければいいと思う
準備? 頭の整理
2006年7月23日実際、会社を辞めて留学するという考えは安直なのかもしれない
疑問に思ったことを書き出してみる
?1年間で本当に都市政策を学べるのか(単に語学だけソコソコできる人になって帰ってくるだけじゃないのか?)
?先に大学かなんなりかに入って、体系だった勉強をしなおしたほうがいいのではないか
?帰ってきて、無一文、無所属になるが、その後の人生をどうするつもりか
まず、順番を整理するためにも、大学の教授に話を聞いてみよう
おそらく、教授には「アホー、君は本当にわかってない」といわれ、不満を持ちながら、友達に電話をかけ、「貴方が思うとおりに生きたらいいよ」といわれて安心を得てしまうだけな気がするが。
それでも、聞かないより、聞いたほうがいい。
彼はこういう気の迷った教え子達を何人も見てきたはずだから。
必要ならば、先に学部なり院なりに行く準備をしなければいけない。
いずれにしても、私の人生で、仕事を抜きにしたものは考えられない。
宅建の資格も取らなければいけないが、これは別に30を超えた後でもかまわないと考えている。(無くても仕事は出来ると両親が昔言っていた)
ところで、姉は一人息子の家へ嫁ぎ、アメリカへ行ってしまったが、なぜ宅建の勉強をしていたのだろう。
姉が26歳のとき考えていたことも知りたい。
?教授に話を聞きに行く
?目的が果たせる場所はどこかを明確にする
今週、まずは?のアポイントメントを入れることにする。
疑問に思ったことを書き出してみる
?1年間で本当に都市政策を学べるのか(単に語学だけソコソコできる人になって帰ってくるだけじゃないのか?)
?先に大学かなんなりかに入って、体系だった勉強をしなおしたほうがいいのではないか
?帰ってきて、無一文、無所属になるが、その後の人生をどうするつもりか
まず、順番を整理するためにも、大学の教授に話を聞いてみよう
おそらく、教授には「アホー、君は本当にわかってない」といわれ、不満を持ちながら、友達に電話をかけ、「貴方が思うとおりに生きたらいいよ」といわれて安心を得てしまうだけな気がするが。
それでも、聞かないより、聞いたほうがいい。
彼はこういう気の迷った教え子達を何人も見てきたはずだから。
必要ならば、先に学部なり院なりに行く準備をしなければいけない。
いずれにしても、私の人生で、仕事を抜きにしたものは考えられない。
宅建の資格も取らなければいけないが、これは別に30を超えた後でもかまわないと考えている。(無くても仕事は出来ると両親が昔言っていた)
ところで、姉は一人息子の家へ嫁ぎ、アメリカへ行ってしまったが、なぜ宅建の勉強をしていたのだろう。
姉が26歳のとき考えていたことも知りたい。
?教授に話を聞きに行く
?目的が果たせる場所はどこかを明確にする
今週、まずは?のアポイントメントを入れることにする。
30madeni yameru 5tsu no koto
2006年7月22日さて、おそらく何かを得るには受け止める両手が必要で
私の手は小さいから、代わりに何かを捨ててみようか
大きな組織、煙草、
まだ、欲望が強すぎるのか、二つしか見つけられない
本当は、雑多なものにあふれた生活なのに
何を捨てたらいいのだろう
全て、愛しているのに?
きっと、得たときに自然と零れ落ちていくのだろう
30までに やめる 5つのこと
気付いたら、離れていくものに
気付くのはいつも後のこと
私の手は小さいから、代わりに何かを捨ててみようか
大きな組織、煙草、
まだ、欲望が強すぎるのか、二つしか見つけられない
本当は、雑多なものにあふれた生活なのに
何を捨てたらいいのだろう
全て、愛しているのに?
きっと、得たときに自然と零れ落ちていくのだろう
30までに やめる 5つのこと
気付いたら、離れていくものに
気付くのはいつも後のこと
7月20日の日記
2006年7月19日これが私の優しさです
という題名の詩集がある
小学生の頃、詩の朗読の時間があり
北原白秋、谷川俊太郎、宮沢賢治、沢山の詩人の詞を読んだ
時が流れて、今なお心に突き刺さるのは、谷川さんの詩だ
ベランダのハイビスカスに水をやるように
縮こまった心を素直にさせる谷川さんの詞
こんな涼しくて、気持ちの良い夜に、ひとつ写してみたいと思う
==
「生長」 谷川俊太郎
わけの分らぬ線をひいて
これがりんごと子供は云う
りんごそっくりのりんごを描いて
これがりんごと絵かきは云う
りんごに見えぬりんごを描いて
これこそりんごと芸術家は云う
りんごもなんにも描かないで
りんごがゆを芸術院会員はもぐもぐ食べる
りんごりんごあかいりんご
りんごしぶいかすっぱいか
==
あぁ
明日も笑って、朗らかに過ごせたらいいなぁ。
という題名の詩集がある
小学生の頃、詩の朗読の時間があり
北原白秋、谷川俊太郎、宮沢賢治、沢山の詩人の詞を読んだ
時が流れて、今なお心に突き刺さるのは、谷川さんの詩だ
ベランダのハイビスカスに水をやるように
縮こまった心を素直にさせる谷川さんの詞
こんな涼しくて、気持ちの良い夜に、ひとつ写してみたいと思う
==
「生長」 谷川俊太郎
わけの分らぬ線をひいて
これがりんごと子供は云う
りんごそっくりのりんごを描いて
これがりんごと絵かきは云う
りんごに見えぬりんごを描いて
これこそりんごと芸術家は云う
りんごもなんにも描かないで
りんごがゆを芸術院会員はもぐもぐ食べる
りんごりんごあかいりんご
りんごしぶいかすっぱいか
==
あぁ
明日も笑って、朗らかに過ごせたらいいなぁ。
30歳までにしたい5つのこと
2006年7月18日死ぬまでにしたい10のこと、を
大雨のヴィーナスラインを超えながら探してみた
意外と少ないね、それじゃぁ30までにしたい5つのことを考えてみようよ、と友人がいった
それはとても素敵なアイデアだと思った
私の大好きな、その彼女は
私よりも、何かに具体性を持たせることが上手だ
一年間、外国で暮らすこと
バックパックで、また気儘に旅をすること
家族で旅行に行くこと
店の資金を用意しはじめること
結婚をして、家族の延長線を見つけること
期限は30歳とおいた
次、やるべきことは会社を離れることだろう
9月から新しい生活を始めるつもりで、3月に去ろうと思う
厳しく、あたたかく育ててくれる今の環境を離れることで
失うものもある
失うものははっきりと見えていて、恐ろしい
得るものは不確かで、やはり恐ろしい
でも、今までの人生はディテールまで愛しているから
この先の人生も、自分で選択した道は愛せるだろう
大雨のヴィーナスラインを超えながら探してみた
意外と少ないね、それじゃぁ30までにしたい5つのことを考えてみようよ、と友人がいった
それはとても素敵なアイデアだと思った
私の大好きな、その彼女は
私よりも、何かに具体性を持たせることが上手だ
一年間、外国で暮らすこと
バックパックで、また気儘に旅をすること
家族で旅行に行くこと
店の資金を用意しはじめること
結婚をして、家族の延長線を見つけること
期限は30歳とおいた
次、やるべきことは会社を離れることだろう
9月から新しい生活を始めるつもりで、3月に去ろうと思う
厳しく、あたたかく育ててくれる今の環境を離れることで
失うものもある
失うものははっきりと見えていて、恐ろしい
得るものは不確かで、やはり恐ろしい
でも、今までの人生はディテールまで愛しているから
この先の人生も、自分で選択した道は愛せるだろう
小さな生活
2006年7月12日バジルとハイビスカスが枯れぬよう、ミートソースの空き瓶で水を注ぐ
可燃ごみは水曜日と土曜日で、私の部屋で発酵していく有機体を嬉々として廃棄にいく
ベランダで向かいの風景と空を眺め、小さい頃に見た韓国の住宅街を毎夜のように懐かしむ
ふとしたはずみで覚えた煙草を、深呼吸の練習のように何度もすう
新しく買った枕に頭をうずめ、明日の目覚ましをセットして眠りにつく
眠る前、歌を歌う
今日は何を歌うのか、新しい詞は私からは生まれないのか
可燃ごみは水曜日と土曜日で、私の部屋で発酵していく有機体を嬉々として廃棄にいく
ベランダで向かいの風景と空を眺め、小さい頃に見た韓国の住宅街を毎夜のように懐かしむ
ふとしたはずみで覚えた煙草を、深呼吸の練習のように何度もすう
新しく買った枕に頭をうずめ、明日の目覚ましをセットして眠りにつく
眠る前、歌を歌う
今日は何を歌うのか、新しい詞は私からは生まれないのか
受容時代
2006年6月26日沢山の新鮮な気持ちを得た6月に
随分と日記から離れていた
その瞬間を書き留めたいと思いながら、流してしまった
それでも、この6月が私にとって大きな曲がりかどであったことは
おそらく生涯忘れないだろう
ただ、窓から見える風景が変わっただけ
ただ、自分だけのキッチンを獲ただけ
ただ、それだけでこんなにも目に映るものの色が詳細が変わっていくなんて
自分の限界が凄く簡単に分かるようになった
自分に抱いていた幻想が消え去ったとき、
肩の力が抜けた
今、一番疲れている瞬間だ
今、一番素直に、疲れてしまう自分を受け止められる瞬間だ
随分と日記から離れていた
その瞬間を書き留めたいと思いながら、流してしまった
それでも、この6月が私にとって大きな曲がりかどであったことは
おそらく生涯忘れないだろう
ただ、窓から見える風景が変わっただけ
ただ、自分だけのキッチンを獲ただけ
ただ、それだけでこんなにも目に映るものの色が詳細が変わっていくなんて
自分の限界が凄く簡単に分かるようになった
自分に抱いていた幻想が消え去ったとき、
肩の力が抜けた
今、一番疲れている瞬間だ
今、一番素直に、疲れてしまう自分を受け止められる瞬間だ
真夜中の庭
2006年5月24日さるすべりも梅の木もはなみずきも、みな緑色の葉を繁らせて
夜空が見えなくなりそうなくらい
忘れていた夏の風がふく
またすぐに忘れてしまう前に、書いてから眠る
おやすみなさい
夜空が見えなくなりそうなくらい
忘れていた夏の風がふく
またすぐに忘れてしまう前に、書いてから眠る
おやすみなさい
至極
2006年5月13日大好きな友人との温かい食事があれば、あとは何もいらないような気がする
今、ここで火山が噴火して、ポンペイみたいに生き埋めになったら
百年後の発掘者たちは、当時の人はなんて幸せそうなんだろうと思うんじゃないかしら、と友人に伝えてみる
ばかだなぁと笑う顔を見て、私は益々幸せになる
旅、日常、将来、家族、情けない話、素晴らしい話
心が開放される、
いつも彼らと話した後、私は旅行に行った後のような自由な風を感じることが出来る
素晴らしい友人に出会えたことに、ただ感謝したい
ありがとう
今、ここで火山が噴火して、ポンペイみたいに生き埋めになったら
百年後の発掘者たちは、当時の人はなんて幸せそうなんだろうと思うんじゃないかしら、と友人に伝えてみる
ばかだなぁと笑う顔を見て、私は益々幸せになる
旅、日常、将来、家族、情けない話、素晴らしい話
心が開放される、
いつも彼らと話した後、私は旅行に行った後のような自由な風を感じることが出来る
素晴らしい友人に出会えたことに、ただ感謝したい
ありがとう
帰り着く場所
2006年5月7日帰りの鞄、また重い
理由は分かっている
旅先で買い集めた本がひっそりずっしりと詰め込まれているからだ
本は折りたためず、空気も抜けず、
時に角が頭に当たって痛かったりもして、
何しろ不便な持ち物だが、気に入ってしまうと持って帰らずにはいられない
東京に戻ってからAmazonで探せばいいのに、と
頭の中で冷静さを取り戻してみる
でもね、待てないのよね、そうでしょう?
分かっている、26年も同じ身体と脳で生きてきたのだから
変わらないものは変わらず
変えようとしない事が問題でも有り、変わらない自分を楽しんでいたりもする
自己満足、昔から、ね
帰りの新幹線、少し先の夢に、もうひとつアイデアを加えた
そうだ、大好きな本を並べよう
まだ先の話だけれど、忘れないよう、ここに書いておこう
子供の頃、古い古い我が家の物置の2階は姉が読まなくなった本が積み重なっていた
陽だまりの中、埃まみれになって読んだ本達
どこまで行っても、どこへ行っても、
きっと私が最後に帰ってくるのは、あの物置の2階だろう
理由は分かっている
旅先で買い集めた本がひっそりずっしりと詰め込まれているからだ
本は折りたためず、空気も抜けず、
時に角が頭に当たって痛かったりもして、
何しろ不便な持ち物だが、気に入ってしまうと持って帰らずにはいられない
東京に戻ってからAmazonで探せばいいのに、と
頭の中で冷静さを取り戻してみる
でもね、待てないのよね、そうでしょう?
分かっている、26年も同じ身体と脳で生きてきたのだから
変わらないものは変わらず
変えようとしない事が問題でも有り、変わらない自分を楽しんでいたりもする
自己満足、昔から、ね
帰りの新幹線、少し先の夢に、もうひとつアイデアを加えた
そうだ、大好きな本を並べよう
まだ先の話だけれど、忘れないよう、ここに書いておこう
子供の頃、古い古い我が家の物置の2階は姉が読まなくなった本が積み重なっていた
陽だまりの中、埃まみれになって読んだ本達
どこまで行っても、どこへ行っても、
きっと私が最後に帰ってくるのは、あの物置の2階だろう
ジョー
2006年5月4日長崎の夜
21時を過ぎると、飲み屋以外は閉まってしまい、
夜になると元気がみなぎってくる私は行くアテもなく、海辺をぶらぶら歩いていた
ふとみかけた雑貨屋
品揃えを見れば、なるほど、これは夜族の好む店かもしれないと納得して入る
どこの国から連れて来られたのか分からない、
そんな品々がごちゃごちゃと置かれている
気をつけて、鞄で後ろの品物を振り落としてしまわぬよう
狭い店内を時間をかけてゆっくり眺めて回る
腕時計を試し、少し考えてきます、と行って店員さんに戻したとき
白い魚と目が合った(ような気がした)
これは何ですか、と聞くと、スロバキアのアーティストが作った石と針金の置物です、と説明された
細長い薄ねずみ色の石に、ワイヤーが巻かれて魚の体をなしている
手に乗せて、鑑賞してみる
ひんやりとして、まるで深海魚のように私の手の上でおとなしくしている
素敵、これ頂けますか?
さっきまで腕時計をはめて優柔不断に悩んでいた私だっただけに
店員さんも面食らっていた
丁寧に包んでもらった石針金魚を受け取り、店を出る
名前は何にしよう
ジョゼと虎と魚たち、と映画の題名がふと浮かんだ
ジョゼから一字貰い、ジョーと名づけた
若草物語の中でも、ジョーは凛とした素敵な女の子だったし
そうして、私の部屋の動物園にまた一匹仲間が増えました
これは、ジョーが我が家に仲間入りした日を記すための日記
21時を過ぎると、飲み屋以外は閉まってしまい、
夜になると元気がみなぎってくる私は行くアテもなく、海辺をぶらぶら歩いていた
ふとみかけた雑貨屋
品揃えを見れば、なるほど、これは夜族の好む店かもしれないと納得して入る
どこの国から連れて来られたのか分からない、
そんな品々がごちゃごちゃと置かれている
気をつけて、鞄で後ろの品物を振り落としてしまわぬよう
狭い店内を時間をかけてゆっくり眺めて回る
腕時計を試し、少し考えてきます、と行って店員さんに戻したとき
白い魚と目が合った(ような気がした)
これは何ですか、と聞くと、スロバキアのアーティストが作った石と針金の置物です、と説明された
細長い薄ねずみ色の石に、ワイヤーが巻かれて魚の体をなしている
手に乗せて、鑑賞してみる
ひんやりとして、まるで深海魚のように私の手の上でおとなしくしている
素敵、これ頂けますか?
さっきまで腕時計をはめて優柔不断に悩んでいた私だっただけに
店員さんも面食らっていた
丁寧に包んでもらった石針金魚を受け取り、店を出る
名前は何にしよう
ジョゼと虎と魚たち、と映画の題名がふと浮かんだ
ジョゼから一字貰い、ジョーと名づけた
若草物語の中でも、ジョーは凛とした素敵な女の子だったし
そうして、私の部屋の動物園にまた一匹仲間が増えました
これは、ジョーが我が家に仲間入りした日を記すための日記
夕焼けデート
2006年5月3日長崎駅に着いたのは午後3時少し前
外海町へ行きたかったが、バスでは1時間半かかるので、遠藤周作文学館の最終入館時間には間にあわない
諦めきれず、ホテルのフロントでタクシー会社に電話してもらい、外海町にタクシーでいくにはどの程度かかるのかと聞いてもらった
「一万円は超えてしまうかもしれない、とのことですよ」
独特のイントネーションで、フロントのスタッフがすまなさそうに言った
一万円、正直微妙なところだ。次回長崎へ来る機会がいつになるか考えると、今タクシーに乗って見に行くべきだ、という自分と、そんな贅沢をしては悪い癖がつく、と戒める自分と。
とりあえず、わかりました、とだけ伝えて、ホテルの外へ出る
どうするか、どうするか、間に合うかわからないがバスで行ってみるか。間に合わなかったら、外海の海だけでも見てこようか。
コンビニエンスストアでカメラのフィルムを買ったついでに、「外海へのバスはどこからでていますか」と聞くと、遠い町まで行くバスの乗り場はよくわからない、という。
それならば、と決心が固まった。
タクシーで行こう。帰りはバスで戻ってくれば良い。
駅の前でタクシーを拾い、「外海の遠藤周作の記念館へお願いします」というと、「どこですかね」とこれまた要領の得ない返事であった。
「黒崎のほうです。あの、教会のある」と伝えると、確認のためか無線で「遠藤周作さんの記念館は黒崎のほうですか」と確認している。
遠藤周作さん、とさん付けで読んでいたのがとても感じ良い方だと思った。
懐かしい外海へ向かう道。前回はバスの窓越しに見た景色だ。
世間話をしながら、車は進んでいく。
「帰りはどうなさるね」と聞かれたので、「一応、バスを予定しています。何時に戻るか決めていないし」と答えると「なら、帰りは半額にしますから、どうでしょうね」と言う。
いくら何でもそれは申し訳ないと、恐縮して断ると、
気にしないでいい、自分は駐車場で少し昼寝をするので、戻ってきてまだタクシーが止まっていたら窓を叩いて起こしてくれればいい、と往路のレシートに携帯番号を書いて渡してくれた。
外海は、2年前と変わらぬ穏やかな海が広がり、
私は遠藤さんの記念館を鑑賞し、海辺まで散歩し、2時間ばかり経って駐車場へ戻ってきた。
彼には、他のお客さんがいれば私を置いていってもらってかまわない、自分はバスで帰るかもしれないし、と伝えてあったので、もしかしたら居ないかもしれないと思ってはいたが、私の心配をよそにタクシーの中でぐっすり眠る彼を発見した。
起こしてしまったことに私は申し訳なさを感じていたが、彼は彼でお客に起こしてもらったことをしきりに恐縮していた。
タクシーに入ると、「お茶はどうですか」と冷たいお茶を出してくれ、「帰りましょう」といって長崎方面へ車をうごかしてくれた。
帰り沿い、私がしきりに外海の景観を褒めていたら、女神大橋というのは知っているか?とたずねて来た。
知らない、と答えると、つい最近できた立派な橋で、そこから見える景色はまたすばらしいのだ、自分も3度ほどしかわたったことはないが、とても感動した、と言う。
それは素敵ですね、というと、同じ長崎へ戻るなら少し遠回りだが女神大橋をわたっていきませんかね、というので、それでは是非お願いします、ということになった。
夕暮れの大村湾を眺めながら、車は進む。
途中、式見かまぼこという蒲鉾屋の前を通り、ここの店の蒲鉾がとても美味しいから是非食べさせたかったと残念がっていた。(残念ながら、今日は店が閉まっていたのだ)
日が落ちる一寸前、ようやく女神大橋にたどり着いた。
料金所のレシートを「記念に」といって手渡してくれる。
ちなみに彼はここまでずっとメーターを動かしていない。
端から眺める長崎湾は興味深かった。
今まで、長崎湾を外側から眺めることがなかったが、運河くらいの幅しかない湾はとても不思議な気持ちを私に起こさせた。
すべてがミニチュアで嘘のようだ。
橋を渡りきったところで、記念の写真を撮る。
彼にも橋を背景に写真に入るように勧め、半ばむりやりに写真を撮った。
だって、そこまでの道で彼がいかに女神大橋を好きかということもわかったし、また話の口ぶりから彼が独身であることも推測できていた。
おそらく、彼は一人でこの橋を渡っているのだろうから、まだ写真を撮ったことはないのではないか、と思ったのだ。
かわるがわる写真をとり、長崎の中心地へと戻る。
2500円でいいという彼に、それは困るせめて3000円は貰ってください、というと、自分の好きで橋を渡ってもらったし、としきりに恐縮していたが、そこは受け取ってもらって、お礼を言ってタクシーを降りた。
外海、大好きな町に、またひとつ暖かい思い出が増えた。
今日の景色、私はきっと生涯忘れないだろう。
外海町へ行きたかったが、バスでは1時間半かかるので、遠藤周作文学館の最終入館時間には間にあわない
諦めきれず、ホテルのフロントでタクシー会社に電話してもらい、外海町にタクシーでいくにはどの程度かかるのかと聞いてもらった
「一万円は超えてしまうかもしれない、とのことですよ」
独特のイントネーションで、フロントのスタッフがすまなさそうに言った
一万円、正直微妙なところだ。次回長崎へ来る機会がいつになるか考えると、今タクシーに乗って見に行くべきだ、という自分と、そんな贅沢をしては悪い癖がつく、と戒める自分と。
とりあえず、わかりました、とだけ伝えて、ホテルの外へ出る
どうするか、どうするか、間に合うかわからないがバスで行ってみるか。間に合わなかったら、外海の海だけでも見てこようか。
コンビニエンスストアでカメラのフィルムを買ったついでに、「外海へのバスはどこからでていますか」と聞くと、遠い町まで行くバスの乗り場はよくわからない、という。
それならば、と決心が固まった。
タクシーで行こう。帰りはバスで戻ってくれば良い。
駅の前でタクシーを拾い、「外海の遠藤周作の記念館へお願いします」というと、「どこですかね」とこれまた要領の得ない返事であった。
「黒崎のほうです。あの、教会のある」と伝えると、確認のためか無線で「遠藤周作さんの記念館は黒崎のほうですか」と確認している。
遠藤周作さん、とさん付けで読んでいたのがとても感じ良い方だと思った。
懐かしい外海へ向かう道。前回はバスの窓越しに見た景色だ。
世間話をしながら、車は進んでいく。
「帰りはどうなさるね」と聞かれたので、「一応、バスを予定しています。何時に戻るか決めていないし」と答えると「なら、帰りは半額にしますから、どうでしょうね」と言う。
いくら何でもそれは申し訳ないと、恐縮して断ると、
気にしないでいい、自分は駐車場で少し昼寝をするので、戻ってきてまだタクシーが止まっていたら窓を叩いて起こしてくれればいい、と往路のレシートに携帯番号を書いて渡してくれた。
外海は、2年前と変わらぬ穏やかな海が広がり、
私は遠藤さんの記念館を鑑賞し、海辺まで散歩し、2時間ばかり経って駐車場へ戻ってきた。
彼には、他のお客さんがいれば私を置いていってもらってかまわない、自分はバスで帰るかもしれないし、と伝えてあったので、もしかしたら居ないかもしれないと思ってはいたが、私の心配をよそにタクシーの中でぐっすり眠る彼を発見した。
起こしてしまったことに私は申し訳なさを感じていたが、彼は彼でお客に起こしてもらったことをしきりに恐縮していた。
タクシーに入ると、「お茶はどうですか」と冷たいお茶を出してくれ、「帰りましょう」といって長崎方面へ車をうごかしてくれた。
帰り沿い、私がしきりに外海の景観を褒めていたら、女神大橋というのは知っているか?とたずねて来た。
知らない、と答えると、つい最近できた立派な橋で、そこから見える景色はまたすばらしいのだ、自分も3度ほどしかわたったことはないが、とても感動した、と言う。
それは素敵ですね、というと、同じ長崎へ戻るなら少し遠回りだが女神大橋をわたっていきませんかね、というので、それでは是非お願いします、ということになった。
夕暮れの大村湾を眺めながら、車は進む。
途中、式見かまぼこという蒲鉾屋の前を通り、ここの店の蒲鉾がとても美味しいから是非食べさせたかったと残念がっていた。(残念ながら、今日は店が閉まっていたのだ)
日が落ちる一寸前、ようやく女神大橋にたどり着いた。
料金所のレシートを「記念に」といって手渡してくれる。
ちなみに彼はここまでずっとメーターを動かしていない。
端から眺める長崎湾は興味深かった。
今まで、長崎湾を外側から眺めることがなかったが、運河くらいの幅しかない湾はとても不思議な気持ちを私に起こさせた。
すべてがミニチュアで嘘のようだ。
橋を渡りきったところで、記念の写真を撮る。
彼にも橋を背景に写真に入るように勧め、半ばむりやりに写真を撮った。
だって、そこまでの道で彼がいかに女神大橋を好きかということもわかったし、また話の口ぶりから彼が独身であることも推測できていた。
おそらく、彼は一人でこの橋を渡っているのだろうから、まだ写真を撮ったことはないのではないか、と思ったのだ。
かわるがわる写真をとり、長崎の中心地へと戻る。
2500円でいいという彼に、それは困るせめて3000円は貰ってください、というと、自分の好きで橋を渡ってもらったし、としきりに恐縮していたが、そこは受け取ってもらって、お礼を言ってタクシーを降りた。
外海、大好きな町に、またひとつ暖かい思い出が増えた。
今日の景色、私はきっと生涯忘れないだろう。
4月19日の日記
2006年4月19日まるでスポンジのように、自分の頭がぎゅっと絞られる感覚
気持ちが悪くて、今日はどうしても起き上がれなかった
会社に電話を入れ、休むことを伝える
携帯をぼんやりと眺め、再び眠りに落ちる
昼過ぎにようやく起きだし、両親と一緒に昼食をとる
肉じゃが、塩鮭、納豆、お味噌汁、白いご飯
あぁ、昔はいつもこういう食事をしていた
懐かしい我が家のご飯
昼食後、ベッドにモバイルPCを持込み、寝そべったまま次の連休に使う新幹線の切符を買い、ホテルを予約した
目の前が、赤く揺れている
薄いカーテンを開けると、庭のはなみずきが満開だった
いつの間に?
少し強い今日の風に、枝を揺らす木
木は無心で、しなやかで、美しい
気持ちが悪くて、今日はどうしても起き上がれなかった
会社に電話を入れ、休むことを伝える
携帯をぼんやりと眺め、再び眠りに落ちる
昼過ぎにようやく起きだし、両親と一緒に昼食をとる
肉じゃが、塩鮭、納豆、お味噌汁、白いご飯
あぁ、昔はいつもこういう食事をしていた
懐かしい我が家のご飯
昼食後、ベッドにモバイルPCを持込み、寝そべったまま次の連休に使う新幹線の切符を買い、ホテルを予約した
目の前が、赤く揺れている
薄いカーテンを開けると、庭のはなみずきが満開だった
いつの間に?
少し強い今日の風に、枝を揺らす木
木は無心で、しなやかで、美しい
逃げる 走る どこまで行くんだ、どこへも行けないんだ
2006年4月18日どこまで行っても、きっと戻ってきてしまうだろう
おとなしく、期日には
臆病なのか、それが常識のある人間のすることなのか
腰紐をつけられた休日は苦しい
4次元を発見出来ないわたしは、時間軸に縛られている
だが、こんな苦しさ、馬鹿馬鹿しくもある
命が有り、家族がいて、仲間がいて、
それ以上のことは、全てプラスアルファなんだと
思えばそれで済むこと
長年甘やかした自分が、赤い目をして、
ぐらぐらと傲慢な欲望を沸かせている
スポイルされた子供と同じように、飴玉を与えてやればおとなしくなる欲望
たった5日間の休みで、満たされるのか
飼い慣らされた犬のように
おとなしく、期日には
臆病なのか、それが常識のある人間のすることなのか
腰紐をつけられた休日は苦しい
4次元を発見出来ないわたしは、時間軸に縛られている
だが、こんな苦しさ、馬鹿馬鹿しくもある
命が有り、家族がいて、仲間がいて、
それ以上のことは、全てプラスアルファなんだと
思えばそれで済むこと
長年甘やかした自分が、赤い目をして、
ぐらぐらと傲慢な欲望を沸かせている
スポイルされた子供と同じように、飴玉を与えてやればおとなしくなる欲望
たった5日間の休みで、満たされるのか
飼い慣らされた犬のように
遠い国からの電話
2006年4月15日ちょうど大手町でコーヒーとサンドイッチを探して途方に暮れていた
最後の頼みの綱であったスターバックスですら休日はお休みで
丸の内まで足を伸ばすか、素直に会社へ向かうか悩んだ末、
時間のロスを考えて、会社へ向かおうと地下道で体の向きを変えた
携帯が鳴り、バッグから取り出すと、会社の先輩からだった
「誰でしょう?」と無邪気に尋ねてくる
私は、半ばあきれた声で先輩の名前を口にする
彼はちょっとがっかりしたような、一方ですぐに自分だと分かってもらえたことがうれしかったような、なんとも言えない声で「髪を切ってこれから食事に行く途中なんだ。暇だからかけてみたんだ」とこれまた無邪気な声で言う
「暇だからかけた、というのは失礼でしょう?人の休日を何だと思ってるんですか?」とあえてきつく言う
きっと彼は笑いながら聞いていたはず
いつもそう、彼は笑っている
アルコールが入ると、どうしようもない話ばかりする人だが
あまりにカラリと話すので、私は彼と話すのが嫌いではない
それに彼の笑顔は、人生の苦渋を飲み込んだ結果の賜物のように写るから
2軒目のバーで、楽しそうに男女の話をする彼を横目で見ながら
間違っても、私はこの人とは結婚しないけどなぁ、と
彼の奥さんと二人の息子を想像してみる
まぁ、人には好みというものがあるんだろう
そして今日の電話
これから食事に、って誰とですか?と聞こうと思ってやめた
彼の楽しそうな声を聞いたら、それが家族だろうと、北海道で知り合ったというフライトアテンダントだろうと、何でも良いのではないかと思った
会社に着き、ある程度の仕事を片付けた頃
懐かしい名前が携帯の着信画面に表示された
呼び出し音が一回で切れてしまったので、こちらからかけなおしてみる
「ひさしぶり、今彼女と君の話をしていたんだよ」と彼が言う
「それはありがとう。私の事を話す暇があったら、自分達の幸せについて大いに語り合ってなさいよ」と私は応える
ねぇ、と彼が続ける
「もし、君がドイツへ行っていなかったら、僕達は付き合っていたと思う?」
一瞬、びっくりして黙ってしまう
「今、彼女と話していたんだよ。君が秋にドイツへ行く前、僕は彼女に相談していたんだ」
「なんだか良く分からないけれど、私はドイツへ行った、あなたは今の彼女と付き合いだしてた、これが事実だし、きっと運命ってそういうものよ」と私はあきれながら言う
「それよりも、そんな悪趣味な質問はやめにして、二人で過ごす時間を楽しみなさいよ」
「うん、そうだね」と素直に彼は同意して、それから彼の新しいオフィスの場所と、近くへきたときには電話をするように、と伝えて電話を切った
今日はおかしな電話が多い
皆、幸せな場所から、なぜ私に電話をかけてきたんだろう
彼らとの会話を想い出すと、国際電話のそれのように、
すこし遠くて、乾いた音だったような気がする
私は淡々と道を歩いていたのに、通り沿いの公衆電話が鳴るので仕方なく取り上げて、見知らぬ人と見知らぬ世界について話して、そして電話を切る
私は再び歩き出すし、きっと電話の向こうの世界もゆるやかに進んでいくのだろう
最後の頼みの綱であったスターバックスですら休日はお休みで
丸の内まで足を伸ばすか、素直に会社へ向かうか悩んだ末、
時間のロスを考えて、会社へ向かおうと地下道で体の向きを変えた
携帯が鳴り、バッグから取り出すと、会社の先輩からだった
「誰でしょう?」と無邪気に尋ねてくる
私は、半ばあきれた声で先輩の名前を口にする
彼はちょっとがっかりしたような、一方ですぐに自分だと分かってもらえたことがうれしかったような、なんとも言えない声で「髪を切ってこれから食事に行く途中なんだ。暇だからかけてみたんだ」とこれまた無邪気な声で言う
「暇だからかけた、というのは失礼でしょう?人の休日を何だと思ってるんですか?」とあえてきつく言う
きっと彼は笑いながら聞いていたはず
いつもそう、彼は笑っている
アルコールが入ると、どうしようもない話ばかりする人だが
あまりにカラリと話すので、私は彼と話すのが嫌いではない
それに彼の笑顔は、人生の苦渋を飲み込んだ結果の賜物のように写るから
2軒目のバーで、楽しそうに男女の話をする彼を横目で見ながら
間違っても、私はこの人とは結婚しないけどなぁ、と
彼の奥さんと二人の息子を想像してみる
まぁ、人には好みというものがあるんだろう
そして今日の電話
これから食事に、って誰とですか?と聞こうと思ってやめた
彼の楽しそうな声を聞いたら、それが家族だろうと、北海道で知り合ったというフライトアテンダントだろうと、何でも良いのではないかと思った
会社に着き、ある程度の仕事を片付けた頃
懐かしい名前が携帯の着信画面に表示された
呼び出し音が一回で切れてしまったので、こちらからかけなおしてみる
「ひさしぶり、今彼女と君の話をしていたんだよ」と彼が言う
「それはありがとう。私の事を話す暇があったら、自分達の幸せについて大いに語り合ってなさいよ」と私は応える
ねぇ、と彼が続ける
「もし、君がドイツへ行っていなかったら、僕達は付き合っていたと思う?」
一瞬、びっくりして黙ってしまう
「今、彼女と話していたんだよ。君が秋にドイツへ行く前、僕は彼女に相談していたんだ」
「なんだか良く分からないけれど、私はドイツへ行った、あなたは今の彼女と付き合いだしてた、これが事実だし、きっと運命ってそういうものよ」と私はあきれながら言う
「それよりも、そんな悪趣味な質問はやめにして、二人で過ごす時間を楽しみなさいよ」
「うん、そうだね」と素直に彼は同意して、それから彼の新しいオフィスの場所と、近くへきたときには電話をするように、と伝えて電話を切った
今日はおかしな電話が多い
皆、幸せな場所から、なぜ私に電話をかけてきたんだろう
彼らとの会話を想い出すと、国際電話のそれのように、
すこし遠くて、乾いた音だったような気がする
私は淡々と道を歩いていたのに、通り沿いの公衆電話が鳴るので仕方なく取り上げて、見知らぬ人と見知らぬ世界について話して、そして電話を切る
私は再び歩き出すし、きっと電話の向こうの世界もゆるやかに進んでいくのだろう
待ち焦がれる
2006年4月14日私からは電話しない、
つまらない約束を自分に課してみた
米国出張から戻ってくるのは日曜だと分かっていながら
忘れたふりをして、さも他の用事があったかのような口ぶりで電話をかけたのは先週のこと
この見え透いた演技が見破られないように(何のために?)、
私から電話はかけないことにした
月曜日、火曜日、きっと出張から戻ったばかりで忙しいんだろう
自分に言い聞かせ、恨めしく携帯を置いて眠る
水曜日、木曜日、きっと新人の歓迎会なんかもたて込んでいるんだろう
グラスを持った彼の大きな手を想い出して、悲しくなる
金曜日、今日はかかってくるはずがない、だって金曜日だもの
午前1時半、大学の友人との電話の最中のキャッチホン
友人に、すぐかけなおすから、と言って慌てて回線を切り替える
相変わらずの淡々とした声で、寝てた、と尋ねられた
私はうれしさを堪え切れない声で、さっき帰ってきたばかり、と答える
簡単に仕事の状況を報告し合い、週末の予定について話し、
もう話すことが無くなってしまう
また週末にかけるよ、と言って彼は電話を切った
大変、彼の気軽な口約束が、私の週末の色を変えてしまう
そんなこと、彼は知らないけれど
私は馬鹿みたいに待ち焦がれている
ただそれだけ
つまらない約束を自分に課してみた
米国出張から戻ってくるのは日曜だと分かっていながら
忘れたふりをして、さも他の用事があったかのような口ぶりで電話をかけたのは先週のこと
この見え透いた演技が見破られないように(何のために?)、
私から電話はかけないことにした
月曜日、火曜日、きっと出張から戻ったばかりで忙しいんだろう
自分に言い聞かせ、恨めしく携帯を置いて眠る
水曜日、木曜日、きっと新人の歓迎会なんかもたて込んでいるんだろう
グラスを持った彼の大きな手を想い出して、悲しくなる
金曜日、今日はかかってくるはずがない、だって金曜日だもの
午前1時半、大学の友人との電話の最中のキャッチホン
友人に、すぐかけなおすから、と言って慌てて回線を切り替える
相変わらずの淡々とした声で、寝てた、と尋ねられた
私はうれしさを堪え切れない声で、さっき帰ってきたばかり、と答える
簡単に仕事の状況を報告し合い、週末の予定について話し、
もう話すことが無くなってしまう
また週末にかけるよ、と言って彼は電話を切った
大変、彼の気軽な口約束が、私の週末の色を変えてしまう
そんなこと、彼は知らないけれど
私は馬鹿みたいに待ち焦がれている
ただそれだけ
春川渓谷
2006年4月9日中央線に乗り換える時の風が少し冷たい
首に巻いていたストールを腰に巻きなおす
電車の中をぐるりと見回すと、スポーツバッグ、登山リュックを抱えた人が沢山、それと朝帰りの女の子が少し
終点の五日市駅で降り、川に向かって急ぎ足で歩く
後輩達は既に川原で寛いでいた
10時のスタートまで、体を温めたり、お手洗いに行ったり、それぞれ生き物らしい行動を取って待つ
ストレッチをする後輩を見ながら、狩の前のチーターみたい、と思う
本当は山猿なんだと気づくのは、まだ先の話
ここは秋川渓谷で、私はおそらく15年ぶりくらいにきた場所となる
小学生のころ、飯盒炊爨できた場所
今日は、レースに参加するために来ている
渓谷沿いを上流に向かって走って戻ってくる10キロメートル
水に濡れますとウェブ上には書いてあったような気がするが
どこでどうやって濡れるのかも良く分かっていない
いつも通り、黒い短いコットンのパンツに、
ヘイトアシュバリーで買った薄くて柔らかいTシャツを着る
布地の薄いランニングシューズをはき、極力水の吸収を抑える
どこでどうやって濡れるのかは良く分かっていないのだけど
そして予め配布された軍手とヘルメットを着用する
これは一体どこで役立つというのだろう
スタートのピストルが鳴る
川沿いの石々に足を取られながら、軽く走り出す
いつの間にか日差しは強くなり、乾いた軍手の中で手が暑い暑いと言い出す
5分程走ったただろうか、妙に混んでいると思ったら、
前の人が皆、川をばしゃりばしゃりと横断していた
足首までくらいの浅瀬だが、渡らないことには前には進めない
確かに水に濡れるレースのようだ、と納得して足を水に差し入れる
予想通り、春の川はまだ冷たい
そのまま、川原沿いの枯れ草野原を走っていると、少しずつ風景が変わってくる
足元も小さな石から岩場になり、川も少し深くなる
軍手をはめた手で岩をつかみ足をかける
川底の苔に足を取られないようにしながら、何度も川を横断する
背の小さい私は、時には腰まで水に浸かるはめになってしまう
折り返し地点の1キロ程手前で、既に復路に入った後輩とすれ違う
高い岩から岩へ飛び移るようにして、一瞬にして彼は消えてしまった
まるで忍者か、山猿のようだった
それはもう、運動神経の塊としか言いようがなく、
凶暴性を孕んだ美しさがそこにはあった
折り返し地点の前は、驚く程澄んだ水で
走り去ってしまうのが勿体ないくらいだった
しかし、今はタイムレースを楽しむ為、ひたすらに進む
折り返してからは、あっという間の5キロメートル
ゴールを抜けて、地元の野菜をふんだんに使った暖かい汁を頂く
水を吸ったウェアが急速に私の体を冷やしていく
着替えを済ませ、川原に戻ると
山猿はオレンジ色のウィンドブレーカーを着て昼寝をしていた
目が覚めて、俺3位だったんですよ、と言う
1位と2位は元国体選手だって、俺凄いっす、と屈託ない顔で笑う
缶ビールをあけ、山猿の健闘と、太陽と渓流に乾杯をする
青い空、緑色の川、バーベキューをする家族達と思い思いの酒を手にくつろぐアスリート達
とてもエゴイスティックだとは思うけれど、
やはりこれは幸せな風景
首に巻いていたストールを腰に巻きなおす
電車の中をぐるりと見回すと、スポーツバッグ、登山リュックを抱えた人が沢山、それと朝帰りの女の子が少し
終点の五日市駅で降り、川に向かって急ぎ足で歩く
後輩達は既に川原で寛いでいた
10時のスタートまで、体を温めたり、お手洗いに行ったり、それぞれ生き物らしい行動を取って待つ
ストレッチをする後輩を見ながら、狩の前のチーターみたい、と思う
本当は山猿なんだと気づくのは、まだ先の話
ここは秋川渓谷で、私はおそらく15年ぶりくらいにきた場所となる
小学生のころ、飯盒炊爨できた場所
今日は、レースに参加するために来ている
渓谷沿いを上流に向かって走って戻ってくる10キロメートル
水に濡れますとウェブ上には書いてあったような気がするが
どこでどうやって濡れるのかも良く分かっていない
いつも通り、黒い短いコットンのパンツに、
ヘイトアシュバリーで買った薄くて柔らかいTシャツを着る
布地の薄いランニングシューズをはき、極力水の吸収を抑える
どこでどうやって濡れるのかは良く分かっていないのだけど
そして予め配布された軍手とヘルメットを着用する
これは一体どこで役立つというのだろう
スタートのピストルが鳴る
川沿いの石々に足を取られながら、軽く走り出す
いつの間にか日差しは強くなり、乾いた軍手の中で手が暑い暑いと言い出す
5分程走ったただろうか、妙に混んでいると思ったら、
前の人が皆、川をばしゃりばしゃりと横断していた
足首までくらいの浅瀬だが、渡らないことには前には進めない
確かに水に濡れるレースのようだ、と納得して足を水に差し入れる
予想通り、春の川はまだ冷たい
そのまま、川原沿いの枯れ草野原を走っていると、少しずつ風景が変わってくる
足元も小さな石から岩場になり、川も少し深くなる
軍手をはめた手で岩をつかみ足をかける
川底の苔に足を取られないようにしながら、何度も川を横断する
背の小さい私は、時には腰まで水に浸かるはめになってしまう
折り返し地点の1キロ程手前で、既に復路に入った後輩とすれ違う
高い岩から岩へ飛び移るようにして、一瞬にして彼は消えてしまった
まるで忍者か、山猿のようだった
それはもう、運動神経の塊としか言いようがなく、
凶暴性を孕んだ美しさがそこにはあった
折り返し地点の前は、驚く程澄んだ水で
走り去ってしまうのが勿体ないくらいだった
しかし、今はタイムレースを楽しむ為、ひたすらに進む
折り返してからは、あっという間の5キロメートル
ゴールを抜けて、地元の野菜をふんだんに使った暖かい汁を頂く
水を吸ったウェアが急速に私の体を冷やしていく
着替えを済ませ、川原に戻ると
山猿はオレンジ色のウィンドブレーカーを着て昼寝をしていた
目が覚めて、俺3位だったんですよ、と言う
1位と2位は元国体選手だって、俺凄いっす、と屈託ない顔で笑う
缶ビールをあけ、山猿の健闘と、太陽と渓流に乾杯をする
青い空、緑色の川、バーベキューをする家族達と思い思いの酒を手にくつろぐアスリート達
とてもエゴイスティックだとは思うけれど、
やはりこれは幸せな風景
ある夜
2006年4月3日小さいころから、うすうす分かっていたことだけれど、私は雨女だ。
1週間晴れた日が続いたのに、昨日だけ雨が降った、それもひどく。
一緒に花見に行こうと約束した友人は、「日曜日は晴れるだろ、なにしろ俺は晴男だし」と自信満々に電話口で私に告げたけれど、
私は心の中でひっそりと「残念ながら、負ける気がしない」と呟いた。
天気予報を見ると、本当に日曜日だけ傘印が表示されていて
私は悲しくなりながらも、そろそろ雨女として生きていく覚悟を決めねばならない、と淡々と思うのだった。
一抹の期待をかけ、ありとあらゆる天気予報のウェブサイトをクリックしながら。
晴男は日曜の午後になっても「雨はなんとか持ちこたえそうだな」とやせ我慢のメールを送ってきたが、もはや雨女として確固たる自信を持った私は、優しく「そうね、このまま雨が降らなかったら春霞に桜ね」と心にもない言葉をとりあえず送っておいた。
ここで私は重大なことに気づいてしまった。
私はおそらく、彼のことが好きなのだろう、と。
間違いなく雨は降るだろうに、それを伝えたら会えなくなってしまうかもしれない、ということを私はひどく恐れていた。
大概において、晴男は雨の日に出歩くなんていう趣味は持ち合わせていないものだし。
そうこうしている間に日は暮れ、私達は大雨の中上野駅へ降り立った。
公園口を出ると、コントのような暴風雨で、こんな中桜を見に行くのは意地を張り合って引くにひけなくなってしまった倦怠期のカップルのようで少し恥ずかしい気がした。
けれど、あと数十メートル先に桜があるのに、
そして晴男は火曜から米国出張へ出てしまい今年桜を見れるのは今日しかないのに、
そんな状況で一体誰が引き返せようか。
もういい、かわいらしくなくても良い、
暴風で髪も傘もよれよれで、ジーンズの裾を捲し上げた私はきっと実家のオカンを思い出させるくらいたくましかっただろうけれど、
私はただひたすらに桜をこの人に見せたい、
それだけの価値がある、この夜、この雨、この馬鹿馬鹿しいシチュエーションの中、今咲き誇る桜を見ることには、だからとにかく前へ進め、進め、進めっ…あぁ、桜の花見えた。
空には満開の桜、足元には琵琶湖程大きい水溜り、
隣には桜をまるで実験対象のように真剣に眺める友人。
それは、彼のことを好きだと気づいてしまったある夜の話。
1週間晴れた日が続いたのに、昨日だけ雨が降った、それもひどく。
一緒に花見に行こうと約束した友人は、「日曜日は晴れるだろ、なにしろ俺は晴男だし」と自信満々に電話口で私に告げたけれど、
私は心の中でひっそりと「残念ながら、負ける気がしない」と呟いた。
天気予報を見ると、本当に日曜日だけ傘印が表示されていて
私は悲しくなりながらも、そろそろ雨女として生きていく覚悟を決めねばならない、と淡々と思うのだった。
一抹の期待をかけ、ありとあらゆる天気予報のウェブサイトをクリックしながら。
晴男は日曜の午後になっても「雨はなんとか持ちこたえそうだな」とやせ我慢のメールを送ってきたが、もはや雨女として確固たる自信を持った私は、優しく「そうね、このまま雨が降らなかったら春霞に桜ね」と心にもない言葉をとりあえず送っておいた。
ここで私は重大なことに気づいてしまった。
私はおそらく、彼のことが好きなのだろう、と。
間違いなく雨は降るだろうに、それを伝えたら会えなくなってしまうかもしれない、ということを私はひどく恐れていた。
大概において、晴男は雨の日に出歩くなんていう趣味は持ち合わせていないものだし。
そうこうしている間に日は暮れ、私達は大雨の中上野駅へ降り立った。
公園口を出ると、コントのような暴風雨で、こんな中桜を見に行くのは意地を張り合って引くにひけなくなってしまった倦怠期のカップルのようで少し恥ずかしい気がした。
けれど、あと数十メートル先に桜があるのに、
そして晴男は火曜から米国出張へ出てしまい今年桜を見れるのは今日しかないのに、
そんな状況で一体誰が引き返せようか。
もういい、かわいらしくなくても良い、
暴風で髪も傘もよれよれで、ジーンズの裾を捲し上げた私はきっと実家のオカンを思い出させるくらいたくましかっただろうけれど、
私はただひたすらに桜をこの人に見せたい、
それだけの価値がある、この夜、この雨、この馬鹿馬鹿しいシチュエーションの中、今咲き誇る桜を見ることには、だからとにかく前へ進め、進め、進めっ…あぁ、桜の花見えた。
空には満開の桜、足元には琵琶湖程大きい水溜り、
隣には桜をまるで実験対象のように真剣に眺める友人。
それは、彼のことを好きだと気づいてしまったある夜の話。