結納

2004年8月15日
40日連続記録がやぶられた今日
夏用のドレスシャツが少し肌寒かった

初めて会う婚約者は随分と優しい目の人で
ぽそりぽそりと喋る姿に好感を持った

いくひさしくお納めください 

いくひさしくお受けいたします

仲居さんが「新婦さんのお父様ひとこと」と促した時だけ
父はすこし震えた声で「よろしくお願いします」と言った
だけど、後は終始ご機嫌だった
母は相変わらずチャーミングだったし
姉はいつもと同じように背筋をきちんと伸ばして懐石をつまんでいた

帰り道「いくひさしくってどう書くの。」と姉に聞いたら

「幾千の幾に、永久の久。これって結婚専門用語?」と返された

神父が永遠の愛を誓わせるように
日本の言葉で言うならば、幾久しく、なんだろう

ちょっとロマンチックじゃない日本の結婚も。
とこっそり嬉しくなったことは姉には伝えていない

アオノクン

2004年8月2日
青野君は部活の後輩だ

後輩といっても、上なのは会社での年次だけで
水泳の実力も、年齢も、本当は私のほうが下なのだ

本当は彼のほうが2歳年上のお兄さんだし、
街でただ会っただけだったら、
きっと立場は逆転してたはずなんだろう

だからだろう、私はいつもアオノクンに興味がある
後輩というファインダーを通したアオノと
26歳というアオノクンとを、交互に眺めてわくわくする

たぶん、人生は長さでは測れないし
たまたま順番が逆転しちゃったのは運命だという事で
とりあえずのところ、彼はこれからも私にとっては後輩なんだけれど

2年の重みは、きちんとアオノの横顔に刻まれているようで
私はたぶん、それを垣間見る度に
彼個人の事情と社会の事情のすり合わせの結果としての「今」を
ぼんやりと感じるんだろう

身体 ミスマッチ 社会

そして
ユーモラスなアオノクンの、優雅すぎる泳ぎを眺めながら
2年という差じゃなくて、
ただ単純に26年というカタマリを見ていると
ふと気づいた昼下がりのプールサイド

朝もやの道

2004年6月6日
大好きな友人と 明け方まで

夏の温度を孕んだ風がコンクリートの上を走る

向こうに見える高層ビルには赤い朝陽と朝もや

鼻腔にひったりする、蒸した朝の空気

青山から だるくて生ぬるい体を抱えながら帰る新宿への道

ヒールが少し痛いけれど

まるで旅の初日のようだと言い合う

時差で疲れた体と うらはらに始まろうとしている朝と

高鳴る期待と はやく家に帰りたい気持ちと

寝坊したお巡りさんが自転車をかっ飛ばして横を通り過ぎる

ぐんと風がふき、今日が始まる
それでも、私は推測するのだが

仕事には、guessは要らないと判っている
本当はこうだろうとか
あの人がこういわざるを得なかった事情もあるんだろうとか
数々の人間の思惑が交差する場所で
右を見て左を見て、また右を見ていたら
信号が変わったことに気づかず事故死する

言葉になったことと、形に表れたものだけが事実であって
言葉に出来なかったことと、形になる前に消滅したものは
仕事の上で語られることはなく

この世に生まれてこなかった思惑や情熱は どこへ行くんだろう

時々私は目を閉じて、報われなかった情熱達のお弔いをする

かたちにしてあげられなくて ごめんなさい

土をかけて手を合わせて、もう一度 guessのない世界に挑戦する

きっと、この恋心ですら、伝えなかったら無いも同然の非情な世界に
果敢に挑んでいく

それでも 言葉に出来ない思いがあると判っているから
私たちは 推測して 見えないところで いたわりあっている

たとえ それが 事実と認められなくても
たとえ それが 勝利とならなくても
  

青い空と乾いた風

2004年4月15日
BRUTUSはチャラチャラした雑誌だけれど、
ウィンドウショッピングをしてる時と同じくらい、
無責任に、真剣に、夢を膨らますことが出来るから、
私はBRUTUSがとっても好き。

それは正月少し前

まっすぐな道、両脇にはやしの木と、
けだるさの全く無い、洗いたてのシーツのようなシティホテル。

でも、さすがのわたしも、
ここは一人じゃぁつまらないだろうと思った。
お夕飯はとびきりゴージャスにしたいし、
プールサイドでだらだらと昔の恋を悔やんでみたり、
世界一のショッピングモールで大きな声で笑いながら買い物したり、
そういうことは、ひとりじゃできないんだもの。

ちょっと縁のあった人を誘ってはみたけれど、
あっさりスペインの話で流された。
また負けちゃった。

冬からずぅっと抱えてきたドバイ行きの気持ちを、
あっさりと友人がかなえてくれようとする。

チケットが取れたら、ギラギラしたドバイへ飛ぶ。

風のせい

2004年4月5日
土曜日の昼下がり、
どうしても会いたくなった友人にメールを送った。

どうしても、彼と映画を見たくて、
いや、違う、
どうしても、彼に会いたくって、何でもいいからメールを送った。

懐かしい、駅ビルの前でいつもと同じ格好で立つ友人。

会って3秒で流れた涙は、きっと冷たいビル風のせい。

きっと、あの子は分かっていたんだろう。
私が、少し疲れていることに。

なんかしらねぇけどよ、
みんな病んでるんだよ、おれのとこに電話かけてくる時ってさぁ。
お前もそうなのか。

そーだよぉー 

お前ほんとにしょうがねぇなぁ、一生病んでろよ。

ひどい、おなか減った。御飯食べよう。

お前、アホだな、まじで。

この会話を交わせたお蔭で、私はすっかり元気になった。
100%にごりの無い会話。

すっかり憂いの無くなった笑い声が、伊勢丹のビル風で飛ばされた。

水平線は穏やかに

2004年3月18日
どこまでも行けそうな気がしてしまった。

手には、何も無い。
持つべきものも
持ちたいものも。

しぼみかけのヘリウム風船のように
地に足着いてるような
どこまでも飛んでいけそうな
どっちつかずの自分を眺めている、テトラポットの上で。

水平線はぐるりと私を囲む

猫道

2004年2月15日
細い道を歩く事を「猫道を行く」と言う。

南青山の猫道で、お目当てのラウンジを通り過ぎてしまい
あぁ迷っていると思った矢先に見つかったピッツェリア。

それは間違いなく美味しいピザ焼き店にのみ贈られる称号を
かわいらしく掲げた縦長のお店で、
1階にはドルチェの並んだガラスケースのみ。

昼もとうに過ぎた午後なのに、
コート掛けには随分沢山の上着が並んでいて、
思わず私は舌なめずりをする。

ここにあの人と来たい、と思った自分を「ばかもの」と叱る。

欲を持たない、期待しない。
それが傷つかないルールなんだと言い聞かす自分に
更に別の私が「アホか」とあきれる。

欲を抑えては、期待する事を諦めては
何も得られないじゃないの。

ぐらんぐらんとゆれる心を抱えて
ぶらりぶらりと猫道を行く。

リリー

2004年2月3日 日常
リリーさんは、日記が嫌いだと書いていた。

知らないところで自分の事を書かれているなんて、気持ち悪い。

リリーさんは、テレビに出たり、文を書いたり、
絵を描いたりするので、色々な人に知られている。

本来なら、こんなところに
無断で誰かの名前を載せてはいけないのだろうけれど、
リリーさんの名前は芸名だから、いいのだろう。と信じてみる。

「今日も浜崎あゆみさんは可愛かった」

と誰かが日記に書くような感じで、私もリリーさんを書いてみる。

「今日もリリーさんのコラムは面白かった」

リリー・フランキー。

distance

2004年2月1日 日常
まったく触れ合ってない心というのが、
なるほど、この世には存在するものだ。

TVのフットボール試合に釘付けの彼と、
他人の家なのに、自宅の一人部屋のようにソファに寄りかかる彼女。

会話はあるけれど、そこには下心のかけらも見つけられない。
彼女はフットボールについて2,3の質問をし、
彼はテキスト通りのパーフェクトな答えを返す。

彼女は、彼がパーフェクトな答えを出す事を知っている。
(彼女はフットボールに関して無知であるので、
彼の答えが即ち100%なのだ)
だから、聞いただけ。
それで彼女の小さな知的好奇心の泡はプチンとはじけ、
また穏やかで平らな水辺が戻ってくる。

これは幸せなのか、無なのか、
それとも、もの凄く何かを失っている段階なのか、
彼女はベッドの中で考える。

心臓の辺りに、真水がひたひたと溢れてくる。
しょっぱくも甘くもなく、からっぽですら無い。

隣で眠る彼の胸から同じように、色も味も無い真水が流れ出て、
少し窒息しそうな苦しさを感じて、
どこかで安心しながら彼女もようやく眠る。

明日の朝起きたら、
真水が砂糖水になっていてもいいのに、神様。

Faaaah

2004年1月5日
ローマからの帰り道、
飛行機でひたすら眠った。

限られた空気を少しずつ削り取るような、
小さく、だけど絶え間ない眠り。

逆に疲れてしまうような、
だけどものすごく贅沢をしているような、
そんな眠り。

もしかしたら、
飛行機に乗りたくて私は旅に出るのかも。

そんな馬鹿な考えすら本気にしてしまいそうな
冴えない脳ミソをぐらぐらさせて。

次は、月まで。

good night


2003年12月13日
苦しいなぁと思う。

久し振りに、苦しいなぁ。

私より先に年を重ねた友人は、
「また、いちから創りあげるのが面倒だわ」といい
「そんなものかしら?」と私は彼女の気持ちをいぶかしんだ。

今なら、共感できるのに。

舞い上がったり、
疑ったり、
独りで合点したり、
創りあげるのが、
もう辛い。

厄介な、恋。

今日の日記

2003年11月30日
テキストで少し肩に食い込む鞄を支え、
雨で濡れた落ち葉を踏んで、階段を上る。

tang tong tatan
tang tong tatan

丸太を並べた階段に、行儀の良いリズムが響き、
私はこの時間に感謝する。

息を吸い込めば、雨上がりのぬるい空気が鼻腔を撫で、
空を見上げれば、雲間から金色の光が覗いている。

私は、ヨーロッパの人たちがかつて描いた
力強い空と雲がとても好きで、
今日はまさにそんな日だった。

出かける前、スイミングプールに行こうか迷っていた私に、
先に出る姉がこう言った。

休日は、平日に出来ないことをする日よ。

公園で、その言葉を思い出して
お姉ちゃんありがとう、と思った。

明日は休日には出来ない事をしよう。
休日には見れない風景を見よう。

休日の終わりに、ふと大手町を歩く人々を恋しく思った。

winter comes again

2003年11月24日
ひとまず、やらなくてはいけないことをひとつ終え、
一息ついたら、風が吹き抜けた。

コートからでた掌が、
さむいさむいと私にいう。

右手にバッグを持つのは、昔から。

手持ち無沙汰な左手をポケットに突っ込み、
駅の階段を登る。

冬はそこまでやってきていて、
ドアの外で静かに待っている様子は、
行儀の良いおじいさんのようだけれど、
ドアをあけたら最後なのはお互いに分っている。

ドアの外、
行儀よく帽子を取り、肩についた枯葉を落とし、
深く刻まれた厳しい皺に少し手をかけ、
また一つ歳を取ったことを確認する。

冬はそんなふうにやってくる。


discovered

2003年11月10日
どうにかこうにか自分を落ち着かせて、
あと七回夜をやりすごそうとしている。
予定外の遭遇で、
私はそれまでの気取っていたペースを乱されて、
少しナーバスになった。

私、この人の事好きなのかもなぁと
会社で思ってみたり、
友人を目の前にして全然違う話をしながら
やっぱり心の裏側で思ったり。

好きだという気持ちに気づいた途端、弱気になって、
それまで「いつでも会えるわ」と思っていたのに
「もう一生あえないかもしれない」なんて思って
ベッドの中でちょっとだけ悲しく感じたり、
そんな自分を「馬鹿だ」と笑ってみたり。

なんだかなぁと、そら見上げてみたり。

地平線

2003年11月2日
一日中、オフィスで仕事をしなければいけない私は
窓の外を眺めるのが好きになった。

秋の澄んだ空気に、遠く山々が見える。
夜の静かなオフィスに、東京タワーの光が差し込んでくる。

地平線まで見渡せたら、それもきっと綺麗だろう。

IMAGINE 

国境も宗教も無い世界は、
人々を幸せに出きるのだろうか。

でこぼこの東京は、それもまた成長の過程だろう。

ライオンだって、縄張りを持つ世界で、
人間だけ、国境も宗教も持たないなんて、
この東京をダンプでスクラップしてしまうような、
そんな凶暴性をはらんだ歌も、また人間らしいと苦笑した。

めっきがけの虫歯

2003年8月24日
いいことを言おうとする人が沢山居て、
それはとっても素晴らしいことのようにも思えるし
少し疲れるようにも思える。

今日のネックレスかわいいねと言われれば
それはお世辞でも、素直にありがとうと言えるけれど
君は世界にとって無くてはならない存在なんだよ、と言われると
そうかしら?と思ってしまう。私が歪んでるのね。

君のことなんて誰も気にしてないよ、といわれると
どこかで安心する。
あぁ、この人のほうが信頼出来そう。

立派な事って案外簡単に言えるんじゃないかと思う。
聞いたふうな「ちょっと良い言葉」が流行っているけれど、
私は何故か疲れてしまう。それもひどく。

御立派な言葉を愛する人よ、
私は貴方とは上手くやっていけない気がするの。

私は、日々を愛する人だから。
今日のレストラン美味しかったね、とか
今日の貴方格好よかったよ、とか
そういう事の積み重ねが好きで、ただそれだけで。

立派な言葉のほとんどは
本当に必要な時に投げかけられず、
日常に投げ込まれる新聞広告のように、
今日も私の心を通り過ぎていく。

2003年8月23日

人を憎まず、罪を憎んで、
そうやって生きていきたいと思うけれど、
それでも彼自身を憎まずには居られなかった夜。

サラリーマンにはなりたくない、と言った彼。

貴方が来年からやろうとしていることは
サラリーマンって言うのよ、と言った私に彼が被せる。

そうだよ、だけど俺は絶対に抜け出すんだ。
蟻の集団から抜けて上に行くんだ。

あぁ、夜中にまた思い出して
腹を立ててしまう私も相当にしつこいけれど、
それくらい、嫌な言葉。

何もかもを犠牲にしても手に入れたがるのが
若者の特権だと言うけれど、
犠牲にするからには心を痛めて欲しい。

満員電車に揺られ、グレーのスーツに身を包んだ人を
サラリーマンという生き物として一括りにしてしまう感性を疑ってもいい?

貴方にはまだ見たことの無い世界がある。

スーツの色は毎日変わる。
そして、心の中も。

私にはこれ以上、彼の夢を聞く愛想は無い。
もう無理。ジェノサイダーの夢なんて。

face to

2003年8月9日
キミの悪い点は、
なんでも楽しいって思ってしまうところなんだよ。
わかるかい?

なんでも楽しそうにたいらげる私に
友人が言った言葉は、嘘じゃない。

それどころか、私自身気付いてこなかった最大の弱点、
昔姉に言われた言葉を思いだす。

私はあなたみたいには思えないわ、
やりたいことははっきりと判っているし、
それ以外のことをするなんて、いやよ。

目の前のことに、愛着を持ってしまう私は
まるでカルガモの子供。

今は、私を育ててくれようとしている上司や環境に感謝していて、
たとえそれが私が当初一番望んだ配属じゃなかったにせよ、その不完全燃焼もエネルギーに変わってしまった。

人が働く姿はやはり美しいと思っている。

for what? for whom?

私の仕事を支える呪文。
朝、コンピュータのスイッチを押しながら
自分に尋ねる。

何のために?

溢れる程に与えられた環境に、
私が何を返すことが出来るのか。

おそらく、今は何も?
せめて、周囲に笑顔と感謝の念を。
そして、未熟さを忘れない謙虚さを。

そして、ずっと心にある言葉を。

仕事とは、何をやるか、では無く、
どうやるか、だろう?

今、全てを心から美しいと思う。

連なる想い

2003年6月30日
新しい香水を、3本購入した。

真夏の香りのボトル、
ブルーの液体が揺れる海色のボトルに、
白百合の背をなぞるような緩やかなラインのボトル

ふと、海外の免税店を思い出す。

ニュートラル。

どこの国の通貨も使え、
人々は英語を話し、
どこの者でもない顔をする。

あぁ、旅に出たい と思う。

知らない通りを緊張しながら歩き、
公園でランチを取り、
巨大な美術舘でソファに腰かける。


今、私は 1人であることを 感じることが出来る。

やっぱり、旅に出たい。


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